楽天EXPOで物流に本腰と三木谷氏語る/独自物流を確立しAIと技術でリアルタイム感覚の配送

石郷“145”マナブ

 楽天株式会社(以下、楽天)は「楽天EXPO」を開催し、同イベントに会長兼社長の三木谷浩史さんが登壇。楽天市場に関連する戦略で遂に物流について語った。

激変したECの環境に楽天が応える

 楽天が発表した物流施策は「ワンデリバリー」だ。昨今、ECに関連したところで、様々な問題が出て来ていて、それは店舗も実感しているだろうが、特に、配送料が高い、なかなか届かないといったことが当たり前のように起き始めている。

 かつてであれば、通信販売はネットできるといっていた時代から、ECそのものが日常的な時代に移り変わって来ている。具体的には、ネットで見ることが日常茶飯事で、そのままネットで買ったり店舗に行くようになっていて、ECは消費者の生活そのものになったというわけだ。それゆえ、配送もピーク時には、値段の問題ではなく受け付けてさえもらえないということが起こっているのだ。

個人から個人に行く配送ではECは対応しきれない

 ここで三木谷さんが強調したのは、その原因として配送が今までのCtoC、つまりは個人から個人に行くという構造自体にあるとして、ここにメスを入れる必要があり、これらの構造をBtoCに当てはめようとすること自体に、無理があるとして、その変化の必要性を説いた。

 具体的には、これにあたり3つの存在を挙げて、その相関関係について触れた。店舗、お客様、プラットフォーマーとしての楽天だ。三木谷さんがいうには、これをより有機的にお客様のデータを活用しながら、AIを活用してエンドツーエンドで実行していくというのだ。

 具体的なイメージも公開し、スマホ上で、お客さまの最適な情報を表示するようにして、場所指定、受け取り方法まで即決断をして、その情報が物流センターに届くようにし、店舗から自動仕分けされて梱包される。下記の写真のように、商品の中身と評価と物流が一体化して意識させて、スマホ画面自体もライトな感覚で配送を身近に受け止められるようにしている。

 下の写真の通りお客様がより感性で配達を選択できるようにして、楽天側もそれに柔軟に答えられるように、独自の物流であることにこだわった。また、お客様の事情も多様化していることを考慮し、お客様の都合で受け取れなくても、すぐにリアルタイムで伝えられ、日時の対応できるようにしていくというのだ。

 物流の拠点とテクノロジーとお客様とが結びついて直感的な配送が実現しているように思う。

 独自物流により配送業者が変わっていけば、店側への対応にも柔軟に答えられる。例えば、注文が多くなれば、何度も配送業者が訪問するなどで店舗の事情を把握できない配送の環境が生み出す不満が蓄積されるなどもあった。が、これにより、柔軟性が増せば、店舗によっては月曜にまとめて持っていけるなど、個々の対応に即応できるようになる。これが同時に配送の効率化も生み出して行く。

 さらに、独自の物流網を作ることで、配送費用の削減をするようなる。そして、独自物流により柔軟性も増す。これは当然ながら、商品自体の扱いも変えていくことになるだろう。楽天市場の扱う商品には500円のものもあれば、10万円のものもあって、これまでであれば、それを同じ配送方法でやっていたものも、分けていくことで、よりお客様にふさわしい提案が可能になる。

 物流拠点の強化に関して新たな楽天スーパーロジスティクスを作って行くという。基本的には、どの店舗が当たり前に「あす楽」をできる感覚で、これにあたって、2019年には、流山、枚方に新たな倉庫をオープンさせ、土日、祝日の出荷が365日可能に、そして、全国90%をカバーできるようになるという。

 現実的なのかということに関してはこれまでで準備をすでに進めていることで、それに答えていた。具体的には、楽天ダイレクト(直販)などを通して、独自配送は東京に始まっていて、ロジスティックス面での強化は行われていると胸を張ったのだ。ここからの発展形として「置配」などもできるように、従来の配送のルールにとらわれないことも触れた。

第三の物流で楽天は配送において勝ち組になれるのか?

第三の物流で楽天は配送において勝ち組になれるのか?

 配送というのはまず思い浮かべるのは、人から人へものを届けるヤマト運輸のようなCtoCであり、これが第一の物流。そして、佐川急便などに見られる企業間取引の配送でこれが第二の物流。確かに、この二つの物流の形態は盤石であり、多くの信用を生んで来た。ECがここまで飛躍するまではこのどちらかの運送形態にあわせることで、ECの配送もなんとか成り立って来たのかもしれない。

 しかしながら、ECは成長した。企業からお客様へと送る「BtoCの配送」の必要性が配送に関わる業種の中で大きな存在感を占めるようになった中で、配送会社もまたあまりのその急成長に対策をしきれなかったというのが現状であったように思う。だから、BtoCの配送を意識したそれ用の配送の文化が根付く必要性が来たのかもしれない。

 出品型のAmazonとは違った形で、出店型での楽天らしい「新しいBtoC物流のあり方」を提示した三木谷さんだが、これが果たして、日本における物流の問題を解決させて行くのか非常に興味深いところだ。

ECノウハウ


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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